Feb 05, 2011
オンライン取引の大手FX
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いよいよ夏本番。だが例年と違うのは、首都圏近郊のオフィスはどこもかしこも暑いということ。いや、オフィスだけではない。電車の中もカフェもレストランも、自宅すらも冷房の温度設定が高めになっている。理由はもちろん、節電のため、だ。
経済産業省は7月1日、東京電力および東北電力管内の事業者や家庭を対象に、15%の電力需要抑制を開始した。今夏はすべての企業が節電に取り組んでいるわけだが、中には節電対策に目を奪われるあまり、実業の生産性が低下している企業も見られるという。
そうした中、節電に対する対策として、今、在宅勤務の導入がクローズアップされ始めている。
一昔前、在宅勤務は育児/介護中の(主に)女性従業員が一時的に利用する制度、と見られがちだった。今でも「仕事はオフィスで行うもの」という考え方は日本企業の間で根強く存在する。だが一方で、「3.11」以前から在宅勤務制度をうまく活用してきたことで、震災直後もすみやかに業務を復旧し、この夏もその生産性を低下させず、課せられた節電目標を下回ることなく乗り切ろうとしている企業がある。それが日本ヒューレット・パッカード(日本HP)だ。
今回、日本HP 人事統括本部 人事企画・コミュニケーション本部 ?橋健氏に、同社の在宅勤務制度のベースとなっている「フレックスワークプレイス制度」について、詳しく話を伺う機会を得た。在宅勤務制度の導入を検討している日本企業にとって、参考となる部分が多々あるはずだ。
●時代とニーズにあわせて変える在宅勤務制度
日本HPは2007年11月から全社員を対象にフレックスワークプレイス制度を実施している。これは、「月に3〜4日程度の割合で、直属の上司の許可を事前に得た場合に限り、自宅での勤務を認める」というもの。ただし震災後の2011年5月1日からは「週2日/月8日」に適用範囲を拡大している。社員の福利厚生のためというよりも、「在宅勤務の導入が生産性向上につながる」という判断がなされたからである。
そして今夏、同社は日本経団連の節電方針を支持する旨を発表、昨年度ピーク比25%減の消費電力量を実現するため、6月から9月末までの期間を節電期間と定め、この期間内に限りフレックスワークプレイス制度の制限回数を解除、完全在宅勤務の運用を行っている。対象となるのは大島本社と八王子事業所、昭島事業所に勤務する約5000人の全従業員だ。なお、業務上、オフィス勤務がどうしても必要となる社員はこれに含まれない。
「フレックスワークプレイス制度では、原則、勤務場所は自宅かまたは大島本社/八王子事業所に限定されていますが、節電期間中はこれに限らず、すべての日本HPオフィス、帰省先の実家や親戚宅、旅行先のホテルなど、セキュリティ上、安全を確保した上での勤務を認めています」と高橋氏。元々、生産性および効率性の向上を目的として始まった制度だが、今回、それに加えて節電という新たな目標が加わったため、適用範囲を大幅に拡大することになった。このように、時代や社会の変化に応じて、制度そのものも柔軟に変更できるようにしておくことが、在宅勤務制度を運用していく上では重要なポイントになる。
「丸一日でなくとも、例えば午前中はお客様のところに行き、午後に自宅で業務を行う、という形態でもOKです。どのように運用するかは現場のチーム長の判断に任せています」(高橋氏)
●在宅勤務を受け入れやすくするフリーアドレス制
同社がすんなりと完全在宅勤務制度を運用できている背景の1つに、大島本社における「フリーアドレス制の徹底」が挙げられる。
日本HPはこの5月、江東区大島の新社屋にて新たに業務を開始した。八王子と昭島の2事業所を除く、都内8カ所のオフィスで働いていた従業員約4000人が新社屋に集まったことになる。新社屋は地上9階建ての広々としたスペースが印象的なオフィス環境だが、全社員数分のデスクは用意されていない。ここでは、誰もが社内のどこでも好きな場所で仕事をすることができるのだ。逆に言えば、役員や固定席での業務をどうしても必要とするごく一部の社員を除き、ほぼすべての社員が固定席をもたない“社内ノマドワーカー”なのである。
大島本社では、3階から7階が従業員用のオフィスフロアとなっている。空いているデスクを見つけ会社支給のノートPCを開き、電話にログインする。これでメールも電話(IP電話)も受け取れるし、会議や打ち合わせをリモートで行うことも可能だ。また、オフィス内は全館無線LANが利用でき、電源の口も社内の至るところにあるので、オフィスフロア内はもちろん、8Fのカフェや1FのミーティングスペースでノートPCで仕事をしている社員も多い。
このフリーアドレス制は、移転以前の各オフィスでも実施されていたが、大島の新社屋ではさらに徹底して全社員レベルで浸透している。「オフィス内のどこにいても仕事ができるという環境が当たり前になっているので、在宅勤務もその延長、ノートPCの持ち出し先が社内から社外に広がったくらいの感覚だと思います」と高橋氏。フリーアドレスという下地が在宅勤務環境のスムースな導入に果たしている部分は大きいようだ。
●IT環境で重要なのはコラボレーションツール
日本HPは世界1、2のシェアを争うITベンダの日本法人である。従って、在宅勤務環境のインフラもさぞかしリッチなのかと思いきや、「在宅勤務にそれほど特別なインフラは必要ない」(高橋氏)とのことだ。むしろ、生産性維持のためにはハード/ソフトともに社内で使い慣れている環境をそのまま在宅でも使えるようにすべきだという。
「当社では、会社支給のノートPC、VPN、それからHP Virtual RoomsやOffice Communicatorなどのコラボレーションツール、データ共有のためのSharePointを基本システムにしています」と高橋氏。私物のPCからのアクセスや通常のインターネット回線からのアクセスを許可する企業もあるが、日本HPはポリシー上、これを許可していない。
在宅勤務環境においてはコミュニケーション/コラボレーションツールがより重要だと高橋氏は言う。在宅勤務は一般に「労務管理が難しい」とよく言われる。もっと言えば上司、人事担当者、あるいは経営幹部が「見えないところで従業員がサボっているのではないか」という疑いを捨てきれないのだ。従業員にとっても疑われながら働くのは当然、いい気持ちがしない。
「在宅勤務を導入する場合、オフィスで働く以上に組織内でコミュニケーション/コラボレーションを意識的に図る必要があります。フェイス・トゥ・フェイスが重要なのは在宅勤務でも変わりませんが、顔を見なくても、いつでもチャットや電話でダイレクトに連絡を取れる状態にしておくなど、双方の努力が必要です。当社では、経過報告などは在宅勤務時のほうがマメになされているという例もあります」(高橋氏)
●まずはトライアルからはじめよう
在宅勤務導入を検討しているものの、さまざまな不安要因に惑わされて、その決断をできないままでいる企業担当者は決して少なくない。高橋氏はそういった企業に対し、まずはトライアルで部分的/限定的に実施してみることを推奨する。
「まったくノウハウのない会社が、いきなり全社レベルで在宅勤務を導入するのは難しいです。トライアルのメリットは、実際にやってみることで最初にあれこれ悩んでいた問題(従業員がサボるのでは、情報が漏洩するのでは、など)がほとんど起きないという事実に気づくこと。やってみると意外と大丈夫だったというケースが多いのです」と高橋氏。
案ずるより産むが易しとはまさにこのことだろう。もちろん、トライアルの結果、自社には向いていない、あるいは時期尚早と判断したのであれば無理に導入する必要はない。ちなみに日本HPも2007年のフレックスワークプレイス正式導入の前にトライアルを実施している。
さらに在宅勤務は万人に向く働き方ではない、ということに対する理解も必要だという。
「オフィスで働きたいという考え方の人にはオフィスで働いてもらえばいいんです。嫌がる従業員に無理に勧めたりしないこと。会社にはいろいろな考え方の人がいますから、全社レベルで一斉導入するよりも、現場のことをよく理解しているチーム長に運用の判断を任せたほうがスムースに進みます」(高橋氏)
日本HPの場合、人事考課のシステムが「働いた時間ではなく、期首に立てた目標をどの程度達成したかで評価される」という点も大きい。オフィスで席についていることが業務という考え方が強い会社は、まずそこを変えるところから始めないと厳しいだろう。
●取材を終えて ― 不慣れなことは有事にはできない
3月11日の大地震直後、日本HPは3日間に渡って全従業員に自宅待機を命じたが、フレックスワークプレイス制度が浸透していたため、ほとんどの業務が滞ることなく継続できたという。
「普段やり慣れていないことを、震災のような混乱時にやろうとしてもまず無理」と高橋氏は言うが、まさしくその通りだろう。被災したときだけ在宅勤務を適用しようとしても、うまくいかない可能性のほうが高い。避難訓練のように、半年に一度、限定的に在宅勤務を実施してみるなど、定期的なトライアルを繰り返しながら、自社にあった方法を見つけていくのも手だろう。
日本HP自身、このフレックスワークプレイス制度はまだ“進化中”のシステムだとしている。「時代によって働き方が変わっていくのは当たり前。当社の場合、新社屋に移ってから、在宅勤務制度をより積極的に運用しているが、社員全員がワンチームという感覚はかえって強くなったと感じる」と高橋氏は振り返る。在宅勤務の理想型ともいえる姿かもしれない。
ToDo
・在宅勤務制度のルール作りは後から変更しやすいようにしておく。
・運用はチーム単位で。
・在宅勤務だからこそ、いつでもどこでも連絡を取れるように双方が努力する。
・まずはトライアルからはじめる。馴染まなければ止めてもいい。
Not ToDo
・全社一斉で同じルールを強制することは避ける。
・在宅勤務をしたくない人もいる。全員に無理やり適用しない。
・緊急時だけの在宅勤務はまず無理。やり慣れていないことは混乱時にはできない
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